村上春樹のエッセイ集「遠い太鼓」を読まれた方は多いと思います。
1986年から89年にかけて、村上春樹がイタリア・ギリシャ・ロンドンなどヨーロッパで生活していたときの数々のエピソードが綴られた紀行文です。
この3年間で、彼は代表作の一つである「ノルウェーの森」や「ダンスダンスダンス」、「TVピープル」などを執筆しています。
読んだ方の中には印象に残ったエピソードもおありかと思いますが、ボクの一番のお気に入りは、村上春樹がイタリアのトスカーナでインノチェンティさんからワインを買ったエピソードです。
刊行直後の1990年に初めて読んで以来、いまでもときどきそこだけ読み返しています。
インノチェンティさんは遠い太鼓の「トスカナ」の章に登場する人物で、
- とてもいい人
- とにかくワイン造りに熱心で、葡萄のことしか考えていない
- ワインを買いに行くと一番自慢のワインを切らしてしまっていて、悲しそうな顔をした
- 自分のワインの値段が高いことで、また悲しそうな顔をした
- 自分の作ったワインを外国人に気に入ってもらえて嬉しそうにしていた
などと描かれています。
ボクは、本の中で描かれているインノチェンティさんのその人柄や造るワインが強く印象に残っていました。
インノチェンティさんに会いたい!
インノチェンティさんのワインを飲んでみたい!
と、ずっと思い続けていました。
そして、遠い太鼓を初めて読んでから30年近く経った今年(2019年)の春・・・。
イタリアに家族旅行する機会があり、執念の捜索の結果、ついにそのインノチェンティさんご本人と思われる方にめぐり逢うことができました!
今回は、そんな「インノチェンティさんをめぐる冒険」をご紹介いたします!
インノチェンティさんをめぐる手がかり
インノチェンティさんの手がかりは遠い太鼓の中で具体的にいくつか書かれています。
今回インノチェンティさん探しをするにあたって、その一つ一つに本気で向き合ってみました。
その手がかりの数々をご紹介します。
場所(エリア)の手がかり
遠い太鼓のインノチェンティさんの登場する「トスカナ」の章では、村上春樹が一番気に入ったイタリアの地方はトスカーナであると書かれています。
さらに、
トスカナ地方、もっと限定していえばキャンティー地方である
とも述べられています。
そして、
キャンティー地方というのは、フィレンツェの南、シエナの北に拡がる地域である。漠然とした地域の総称ではなくて、ここからここまでがキャンティー地方という線がきちんと引かれている。
ともあります。
つまり、村上春樹は自身のお気に入りをイタリアのトスカーナ地方の中でもキャンティーエリアに限定しているような感があります。
実は、ボクは20年ほど前の2000年頃にも一度このキャンティーエリアでワイナリー巡りをしたことがありました。
そして、その時もインノチェンティさん探しを試みました。
しかし、当時はインターネットも初期の時代であまり普及しておらず、またGoogleマップなんてものもなく、アナログな情報を頼りに探しましたが、この「キャンティー地方」という条件が最大の壁となり挫折しました。
トスカーナの中でもキャンティーにしぼるとそれらしいワイナリーはさっぱり見つけられませんでした。
今回も、同じくキャンティー地方に限定すると見つけることができませんでした・・・。
そこで今度はキャンティーにこだわらず、もっと広くトスカーナ地方全体を探してみることにしました。
そもそも、この章のタイトルが「トスカナ」だし・・・。
インノチェンティさんにつながる根拠が少し脆弱になるかもしれませんが、手詰まり感もあって今回は捜索する範囲をトスカーナ地方全体に拡げてみることにしました。
周辺環境の手がかり
次にインノチェンティさんのワイナリーの周辺環境の手がかりを紹介します。
エッセイの中では周辺環境としては、
裏庭からは夕暮れのトスカナの平原が一望に見渡せる
丘が見え、そこかしこに湖が点在している
遥か彼方の丘の上には中世の城壁が見える
どこまでも続く畑と葡萄園
などと描かれています。
これらを意識しながら、トスカーナ地方の城や城跡と湖が点在している場所、そしてその近隣の葡萄畑が拡がる平原のような場所をGoogleマップを使って絞り組む作業に取り組みました。
また、Googleマップには城や湖などは有名そうなものしか登録されておらず、未登録な場所も多そうだったので、航空写真でもチェックしました。
そして、最終的になんとなくこの辺かな?という場所を数カ所に絞りました。
家や建物の手がかり
エリアと周辺環境の次は、どんな建物(家)か?に関する手がかりを整理しました。
文中で、建物の様子が具体的にわかる箇所は、
小さな葡萄酒屋
インノチェンティという家
ごく普通の家で、そうと聞いていなければとても葡萄酒作りの家には見えない
地下の酒倉
外見は普通の家だけれど、地下室は広い
いろんなよくわからない機械があり、樽がずらりと並んでいる
などです。
この条件を満たすような建物を、先ほど見当をつけたエリア付近でグーグルストリートビューなどを活用し捜索しました。
また、同時に名前検索もしながらググり続けました。
その他の手がかり
その他の手がかりとして、以下のような記載があります。
本当は小売はやってない
もう何代もワイン作りを続けている家
いくつか違うところに葡萄園を持っていてね
イタリア国内では市販していないそうである。だいたいはカリフォルニアやらオーストリアに輸出される
これらは、物理的な手がかりとなりませんが、インノチェンティさんに結びつく重要な情報として参考にしました。
捜査線上にある一軒のワイナリーが浮かび上がった! ここがインノチェンティさんのワイナリーなのか!?
上記のすべての手がかりを総合的に勘案しながら執念の検索を続け、いくつかの候補の中から最終的にひとつのワイナリーに絞りました。
トスカーナ地方のシエナの南東で、ピアンツァやオルチャ渓谷にほど近いモンテフォッロニコ(Montefollonico)という小さな町にあるCantine Innocenti(カンティーナ・インノチェンティ)というワイナリーです。
ホームページも見つけました。
村上春樹はインノチェンティさんに会ったときの印象として、本の中で、
頭の薄くなりかけた、温厚そうな感じの人
地方の私立大学の先生のよう
と描写しています。
このホームページの中央でワイングラスを傾けている頭の禿げ上がったおじいさんこそ、探し求めているインノチェンティさんなのでしょうか?
いまから30年ほど前は頭が薄くなりかけた状態だったとも考えられますし、写真からはとても温厚そうな感じがうかがえます。
また、ホームページには、この写真の人物と思われるVittorio Innocentiさんは「何年も前に哲学を教えるのを辞めてワイン造りに従事した」とも書かれていました。
「地方の私立大学で先生」のような印象そのものです。
さらに、「イタリア国内をはじめ、特にドイツ・オーストリア・スイス・オランダ・デンマーク・ベルギー・チェコやスウェーデンなどで売られており、これらの国々とは重要な仕事上の関係にある」といったことも書かれており、輸出に力を入れていることもうかがえます。
こちらのワイナリーはイタリア国内でも売っているようですが、輸出先の一つに手がかりにもあったオーストリアも含まれています。
ここまで絞り込みましたが、この時点で正直あまり自信はありませんでした。
エッセイ中の手がかりと一致している項目は多いのですが、なによりもトスカナ地方、もっと限定していえばキャンティー地方である
かもしれないという条件は満たしておらず、確信までは持てませんでした・・・。
このワイナリーこそ、遠い太鼓に出てくるインノチェンティさんのワイナリーなのだろうか?
そして、ここに行けば30年来恋い焦がれたあのインノチェンティさんに会えるのか?!
とにかく、行ってみようではないか!!!
実際に行ってみた!!
トスカーナに滞在して4日目のこと。
今にも雨が降りそうだったその日の朝、家族的にはトスカーナで行きたいところ・見たいところは全てすませたので、朝食のときに妻におそるおそる切り出しました。
「村上春樹の遠い太鼓に出てくるインノチェンティさんのワイナリーらしきところを見つけたんだけど、行ってみない?」
妻も以前から村上春樹にハマっていますが、全然信じてくれません・・・。
「だって、イタリア全体でワイナリーはどのくらいあると思うのよ?
トスカーナだけでも数万のワイナリーがあるのよ。
本に書かれた断片的な情報だけでみつけられるわけないじゃん!」
と、鼻で笑われました。
・・・。
それでも、
「まあ、せっかくここまで来たし、ここからそれほど遠くもないし、まあいいんじゃない。」
ということになり、朝食後に少し休んでから目的地であるモンテフォッロニコに向けてレンタカーで出発しました。
昼前に目的のモンテフォッロニコに到着しました。
名前も聞いたことがないような小さな町
と描かれているだけあってどんな観光ガイドにも載ってません。
観光するところではなく、完全にローカルエリアです。
よくあるイタリアの田舎町のように小高い丘の上にあり、一部を城壁で囲まれていました。
歩いても30分もかからず一周できるほどの小さい町です。
僕らは町の入口の駐車場に車を止め、歩いてインノチェンティさんのワイナリーを目指しました。
昔ながらのイタリアの田舎町ですが、石畳や各家の壁やドアはとても手入れが行き届いていて、人々がここで生活していると実感できます。
小綺麗で感じのよい町。
車を降りて歩き始めてから10分ほど・・・。
この辺にインノチェンティさんのワイナリーがあるはずなんだけど・・・。
ふと見ると、左手の車が2台停車している家のガラスのドアになにやら書いてある・・・。
これが!?
・・・!!!
あった!!!
Cantine Innocenti!!!
インノチェンティという家
→ 手がかりと一致!
たしかに、
ごく普通の家で、そうと聞いていなければとても葡萄酒作りの家には見えない
→ 手がかりと一致!
ということは、この両隣のどちらかの家は村上春樹にインノチェンティさんを紹介した「フランコ」の実家でしょうか!?
ガラスドア越しに見える玄関の向こう側のスペースには、70代〜80代と思われるおじいさんと2人のお客が商談らしきことをしていました。
思い切ってドアを開けて、建物の中に入ってみました。
ちょうど話が終わったタイミングだったようで、先客達は「ここのワインは美味しいよ!」と英語で言って出て行ってしまいました。
おじいさんと僕たち家族だけが残された空間で、少しばかりの沈黙・・・。
はたして、イタリアンブルーのセーターを着たこの品の良いおじいさんが、遠い太鼓に登場するあのインノチェンティさんなのか!!!???
アポ無しで訪れ、しかもなぜか興奮気味の異邦人家族を前に、おじいさんは戸惑った様子でした・・・。
ボクはこみ上げる思いを押さえることはできず、いきなり早口で「日本の小説家の村上春樹をご存知ですか?彼は以前ここに来たようなのですが・・・。」と、英語で聞いてしまいました・・・。
話の内容も唐突でしたが、どうやらこのおじいさんは英語を話さないようで話がまったく通じません・・・。
そこで、ボクはスマホの翻訳アプリを立ち上げ、こみ上げる思いを何とか押さえ、シンプルに「あなたのワイナリーを見せていただけませんか?」とイタリア語のテキストに翻訳して画面を見せました。
すると、不思議そうにボクらを見ていたおじいさんでしたが、やがて何回かうなずいて建物の中を案内してくれることになりました!!!
まず案内された玄関スペースの奥には、
地下の酒倉
が見えました!
→ 手がかりと一致!
また、壁にはホームページに載っていた顔写真と同じものが引き伸ばされて飾ってあり、「この写真はあなたですか?」と聞くとおじいさんはウンウンとうなずきました。
このおじいさんがホームページに載っていた写真の人物、ヴィットリオ・インノチェンティ(Vittorio Innocenti)さんであることが判明!
そして、そのまま地下の酒蔵を案内していただきました。
外見は普通の家だけれど、地下室は広い
→ 手がかりと一致!
いろんなよくわからない機械があり、樽がずらりと並んでいる
→ 手がかりと一致!
次は倉庫(貯蔵庫)のようなスペースへ。
こちらも樽やボトルであふれています。
倉庫内には試飲スペースがありました。
テーブルの上には先客がテイスティングしたような痕跡が残っていました。
倉庫のつぎは裏口へと案内されました。
裏口ではヴィットリオさんの飼い犬(?!)が我々を出迎えてくれました。
とてもフレンドリーな犬でした。
裏口から外に出ると、そこに裏庭が出現!
この庭が、エッセイ中で村上春樹が2時間ほどテイスティングした裏庭でしょうか?
裏庭は低い塀で囲まれており、その向こう側は急傾斜になっています。
ヴィットリオさんはボクらを塀のそばまで導きました。
すると・・・、
裏庭からは夕暮れのトスカナの平原が一望に見渡せる
→ 手がかりと一致!
訪れたのが夕暮れではなく午前中で、しかも厚い曇り空でしたが、トスカーナの平原が一望できる裏庭です。
それから、目の前に拡がる風景を眺め、あちらこちら指を差しながら、ヴィットリオさんが話し始めました!!!
あれが私の葡萄園です、とインノチェンティさんは教えてくれ
ました!
イタリア語はよくわかりませんが、ヴィットリオさんの身振り手振りから自分の葡萄畑の話をしているのがハッキリわかりました!
→ 本のあらすじとまったく同じだ!
あそこのも私の葡萄園。自分の葡萄園を指さしているときの彼の顔は至福に満ちてい
ました!
→ これも本のあらすじとまったく同じ!
本当に幸せそう!!!
それから、ヴィットリオさんは遠くの方を指差して、
「ラーゴ(Lago:湖)」
とおっしゃりました。
・・・。
今にも雨が降りそうな曇り空の遠く向こう側に、ぼんやりと湖の姿が見えました。
・・・。
・・・。
(ついに見つけたかも・・・)
・・・。
・・・。
・・・。
ボクはおそるおそる、
「カステッロは?」
と聞いてみました。
すると、ヴィットリオさんは今度は反対側のずっと遠くを指差して、
「カステッロ・・・」
と呟きました・・・。
・・・。
・・・。
カステッロ・・・。
・・・。
・・・。
ヴィットリオさんが呟いたこの一言で、ボクの中にわずかに残っていた疑いは完全に払拭されました・・・。
カステッロとはイタリア語で城(Castello)のことです。
ボクの中で長年におよんだ「インノチェンティさんをめぐる冒険」のすべてのピースが出揃いました・・・。
丘が見え、そこかしこに湖が点在している
遥か彼方の丘の上には中世の城壁が見える
そしてどこまでも続く畑と葡萄園
→ 目の前にひろがる光景と、エッセイの描写が完全に一致しました!
遠い太鼓の中で描かれていることが、あらすじ通りに次から次へと繰りひろげらています・・・。
こここそが、村上春樹が「フランコ」から教えてもらったワイナリーに違いない!!
そして、このヴィットリオさんこそ遠い太鼓に登場する「インノチェンティさん」ご本人に間違いない!!!
そう確信した瞬間でした!!
裏庭から見える景色を説明してくれた後、インノチェンティさんは倉庫にもどってテイスティングをさせてくれました。
テイスティングといっても、ちまちまと口に含んで味を見るテイスティングではない。それぞれにまるごと1本どんと出てくるのだ。
突然の訪問にもかわからず、時間を割いて2本もワインを開けてくれました。(感謝)
いろいろお話したいこともありましたが、感動しすぎて言葉を失い、また言葉も通じず、薦められるままに2種類試飲させていただきました。
1本目に開けてくれたのはVino Nobile di Montepulcianoというモンテプルチアーノ地区特有のワイン。
なお、インノチェンティさんのワインの味について、ボクからは何も書きません。
村上春樹がエッセイ中で細かく描写しているのでどうぞお読み下さい。
あえて言うならば、30年近くずっとずっと恋い焦がれていた、言葉にできない感慨深い味でした。
隣接するモンタルチーノ地区のワインは日本でも有名で、これまでもけっこう飲んだことはありましたが、今回の旅行で初めていくつか飲んだこちらのモンテプルチアーノ地区のワインの方がボクらの好みかもね、と妻とは意見が合いました。
そして、2本目があの「インノチェンティさんのヴィン·サント」!
それからもうひとつ言い忘れてはならないのが、インノチェンティさんのヴィン·サント。
ドルチェ(甘口)の方を薦められ試飲しました。
セッコ(辛口)も試したかったのですが、言葉の問題と奥ゆかしさから言えませんでした・・・。
テイスティングも終わり、試飲した2種類のいずれとも購入したいと伝えました。
すると、ここでなんとインノチェンティさんは悲しそうな顔をしました!!!
僕がこのヴィン·サントは素晴らしいと言うとインノチェンティさんはまた悲しそうな顔をした。売りたくないのかなと思っていると、「実はこれは値段がちょっと高いんです」と彼は言う。どれくらいするのかとびくびくしながら尋ねてみると、「一本千円くらいになるんですよ」ということだった。
この描写とまったく同じ光景が再び繰り広げられます・・・。
ヴィン·サントの売値について、造る工程や年数などを身振り手振りで説明してくれてから、インノチェンティさんは悲しそうな顔をして、
「だから、一本35ユーロくらいになるんですよ・・・」
と言いました。
村上春樹が訪れた当時は1本1000円くらいとのことでしたが、30年も経てば値段も上がるのは当然でしょう。
それでもよいから6本ずつください、と全部で12本お願いしました。
本当はもっと買いたかったけど、飛行機に乗って持ち帰るにはそれが限界でした・・・。
(ちなみにVino Nobile di Montepulcianoの方は12ユーロでした)
悲しい顔をするインノチェンティさんの姿まで堪能でき、感無量です。(泣)
さらに、さらに・・・。
ヴィン·サントはボトリングされた在庫が足りないことがわかり、これまたエッセイと同じくインノチェンティさんが、
その場で樽から瓶に詰めて、コルク栓をして、
くれました!!!
そして、インノチェンティさんは、
ラベルをぺたっと貼って、箱に入れてくれた。
なんとまあ、最後まで本のあらすじ通りに進むこと進むこと・・・。
感動垂れ流し状態です・・・。(号泣)
彼はそのあいだずっとにこにこしていた。自分の作ったワインを異邦人に気に入ってもらえたことが、けっこう嬉しそうだった。
突然の訪問にもかかわらずインノチェンティさんは最後までずっとニコニコしていました。
本に出てくるように、本当にラブリーな方でした!
本当に、本当に!!!
わざわざトスカナまでワインを買いにきたかいがあったというものである。
でした!!!
あとがき
ちなみに、遠い太鼓の中では他にもキャンティー地方のエピソードとして「雉鳩亭」のお話があります。
こちらのエピソードにでてくる雉鳩亭さがしにもトライしてみましたが、そのゆかりの地を探し当てることは出来ませんでした。
近くのレストラン名などけっこうな手がかりはありましたが、当時から30年近く過ぎたいまではエッセイ中で村上春樹が書いているように、雉鳩亭の奥さんがまだ旅館を経営しているかどうかは、かなりむずかしい
らしいので今回はあきらめました。
いつかチャレンジしてみたいと思います。
また、遠い太鼓の他にも村上春樹は別の紀行文集「ラオスにいったい何があるというんですか?」の中でトスカーナのエピソードを紹介しています。
その中で、バディア・ア・コルティブオーノというワイナリーを紹介していますが、こちらはいまも実在しており機会があれば訪れたいと思います。
さて、インノチェンティさんのワイナリーを訪れてから半年以上過ぎたいまこの記事を書きましたが、書いている最中あの感動が再び湧いてきて何度も涙が出て来ました。
モンテフォッロニコのカンティーナ・インノチェンティを訪れる前はボクの言っていることをまったく信用していなかった妻も、つぎつぎに展開された遠い太鼓で描かれている情景とまったく同じ光景や、インノチェンティさんの人柄に、
「あの人は絶対に遠い太鼓のインノチェンティさんだ!」
と信じて疑わなくなりました。
インノチェンティはかなりのご高齢かと思われましたが、いつまでも末永く健康に長生きしていただきたいです。
また機会があれば、今度はイタリア語を少しは話せるようにしてうかがいたいと思います。